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頭に柿の木

実家から柿が届いた。実家の庭の柿の木は毎年多くの実をつける。

もう7~8年前のことだろうか、久しぶりに実家に帰ると、父親の頭に大きな絆創膏が貼ってあったので「どうしたの?」と聞いたが返事がない。

母親に聞いたところによると、秋晴れのある日、父親は柿がたくさんなったので父親自慢の『高枝ばさみ』でチョキン、チョキンと枝を切っていた。

しばらくすると、玄関から「おか~さん、おか~さん(母親のこと)」とひどく慌てた声が聞こえてきたそうだ。

母親は急いで玄関に小走ると、目の前に柿の実がついた枝を頭に突き刺した父親が立っていた。

母親は事態が呑み込めず、しかしその毛髪薄い父親の頭から柿の木が生えているようで可笑しくて笑ってしまった。

父親のかなり動揺している姿から、これは冗談ではなく本当に柿の枝が頭に刺さったことを理解した母親はどうするか迷ったそうだ。

下手に枝を抜くと出血がひどくなるかもしれない、父親は気が弱いので血を見たら・・・それならばと急遽病院へ連れて行くことにした。

救急車は大袈裟になるので、母親の運転で病院へ。怪我は大したことはなく、ほっとしたのもつかの間・・・。

実家から病院までの移動の間、多くの人が父親のことを目撃していたらしい。彼らの口々から漏れ伝わったことは書くまでもない。

確か、落語にもあったと思うが『頭に柿の木』 

柿が届くたびに、無事なのだろうかと父親の頭に思いをめぐらしながら感謝 

「父上、今年の柿もおいしいです」

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