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『2017年8月から2018年5月頃までの血友病、HIV、HCV治療への雑感』

『2017年8月以降のHIV,HCV,血友病に関する治療薬の動き』
 
これまで、輸血や血漿製剤、クリオ製剤を経て濃縮血液凝固因子製剤などすべて静脈注射による第Ⅷ、Ⅸ因子等の補充療法が営々と
 
続いていたのが主たる血友病治療法だった。科学の発達に追いついているとは思えない血友病治療製剤は、幼少期から老年期になっ
 
ても静脈注射による不足因子の補充からサヨナラできる時代は遠かった。
 
その間に、たくさんの血友病患者家族の命を奪った薬害エイズ事件が発生、日本でも1,400人以上の患者家族がエイズ原因ウイルスの
 
感染被害を被った。事件の背景には高価な血液凝固因子製剤を工業的に生産し高薬価の保険収載に対する値引き販売による一部医療
 
者や医療機関の薬価差益利潤に目がくらんでか、患者のエイズ感染リスク回避が遅れたことも否定できない問題だった。こうした患
 
者の命を疎かにした製薬会社・医療経営上の利潤追求に奔走する病院や医療者、その医療環境を野放しにしていた行政、産官学の癒
 
着構造が感染被害者を一生苦しめる薬害を発生させた。HIV感染被害に対する訴訟和解での恒久対策から、「血友病の根治をめざ
 
した研究」を国に要請した。研究は20年近くになりようやく日本発の血友病遺伝子治療への期待に応えられるような準備が始まっ
 
ている。並行して、これまで血友病治療製剤を扱ってこなかった製薬会社から、新たな作用機序の治療薬の開発され、半減期の長い
 
皮下注射の選択ができる時代になってきた。
 
一つが、抗体医薬品で、日本の中外製薬が創製しロッシュと共同開発したインヒビター保有血友病A患者、またインヒビターを保有
 
していない血友病A患者向けの「ヘムライブラ皮下注(一般名=エミシズマブ)」が「血液凝固第Ⅷ因子に対するインヒビターを保
 
有する先天性血液凝固第Ⅷ因子欠乏患者における出血傾向の抑制」という効能・効果を有する製剤として3月23日に国内製造販売承
 
認を取得し、5月22日に販売を開始している。なお、同剤は在宅自己注射管理料の薬剤にも指定されている。
 
なお、「ヘムライブラ皮下注」に「血液凝固第Ⅷ因子に対するインヒビターを保有しない先天性血液凝固第Ⅷ因子欠乏患者における
 
出血傾向の抑制」の効能追加申請を行ったとの発表(4月26日)もあった。
 
インヒビター保有の患者さんは、臨床第3相試験参加し、これまでの治療では困難だった四肢関節内出血などの止血に大きな効果が
 
あり、仕事を探すくらいの復活をして家庭全体が明るくなったとの連絡を母親から受けた。
 
また、米アルナイラムとサノフィは、核酸医薬の新規血友病製剤「フィツシラン」を開発し、昨年夏から臨床第3相試験に着手して
 
いるそうだ。フィツシランは、siRNAによる抗アンチトロンビン療法として開発中で、siRNAが肝臓に取り込まれ、血液の凝固を阻
 
害するアンチトロンビンを抑制することで効果を発揮すると考えられていた。「ヘモライブラ」は血友病Aに効果が絞られている
 
が、「フィツシラン」は血友病A,Bの両方に効果が期待できるということで期待されていたが、昨年12月15日、同剤については、
 
米国食品医薬品局(FDA)は臨床研究を中止とした。同剤の作用機序の臨床的意義は検討中だとのこと。
 
しかし、上記2製剤もいかんせん補充療法の延長になるが、日本や欧米で取り組んでいる遺伝子治療については、治療そのものの
 
スパンは大きく、今後の研究開発によるが、生涯数回の治療で済む時代の到来も期待したい。英国グラスゴーで本年5月に開催され
 
た世界血友病連盟2018年世界大会では、遺伝子治療のセッション・話題が大きく占めていたと、はばたき福祉事業団の参加した
 
研究員たちから報告としてあげられた。
 
なお、一方で、注射ではなく、またやや大きな治療も必要なく、経口薬での補充の未来も期待したい。より簡便で、患者家族に負
 
担のない、そして医療費負担の軽い治療法の開発は、患者・家族そして将来の関係者に対して大いに期待されるべき課題である。
 
 
HIV治療薬に目を転じると、服薬アドヒアランスを高め、現座では生涯飲み続けなければならない状況を考慮しての、1日1剤の
 
簡便で効果的な抗HIV薬を提供にしのぎを削っている。最近になってもMSDの「アイセントレス」が承認され、ヤンセンからは
 
「リルピビリン」「エムトリシタビン」「テノホビル アラフェナミドフルマ」の3成分を配合した合剤の内服薬の承認申請をしてい
 
る。極力副作用などが毒性を減らす試みが盛んにおこなわれていて、心血管系リスクの高い患者に対するプロティアーゼ阻害薬とリ
 
トナビルの併用レジメンの変更を考慮した薬の開発で血中脂質や総コレステロールを低下させる方向へ導きつつ、ウイルス抑制効果
 
も高い有効性と安全性を狙ったものが出てきている。
 
一方で、以前から開発が進められ現実化した英ヴィーブヘルスケアの長期作用型「ガボテグラビル」の位置づけは、治療の形態を大
 
きく変えるかもしれない。この薬のように、1か月に1回(2剤を打つので2回になる)筋肉注射の選択も出てきた。一方、欧米で
 
感染予防効果を期待しての抗HIV薬「ツルバダ」を毎日経口服薬して、感染を抑制させる予防法が欧米では先行している。
 
日本もこの2月から国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センターが国内発の臨床試験を始めているという。「PrEP
 
(プレップ)」と呼ばれていて、感染リスクの高い特定の集団を対象に行うというが、新たなHIV/AIDS感染者・患者が一定数維持し
 
て感染者・患者がなかなか減らない傾向から採らざるを得ない策ともいえる。但し、長期に健康な人が服薬することから、その副作
 
用など害毒性については、どう対応するのか、またあってはならない事態に対応することも研究の課題ともなるのではと思う。なお
 
、更に進んで、治療薬でも始まりつつある2か月1回の長期作用型「カボテグラビル注射剤」筋肉注射し、経口投与薬(1日1回)
 
と比較する治験が海外で開始されている。
 
新しい抗HIV薬が開発、市販される一方で、古い抗HIV薬は新しい薬に比べ害毒性が強いためなどを理由により安全性の高い新薬にと
 
って代わっていく。こうした需要減少、安全性危惧の点から「インジナビル」は製造販売が中止となり、古い世代の抗HIV薬は次第に
 
姿を消していくことになるでしょう。また「ストックリン」に重大な副作用に「QT延長」と心疾患系の症例が海外で集積さてた旨の
 
添付文書改訂指示が出されている。
 
また、HIV治療についても遺伝子治療による根治に向けての研究も盛んにおこなわれている。患者としては、早く根治療法の到来
 
を待ち望んでいる。
 
 
遺伝子治療が海外でかなりのスピードで臨床研究で拡大していると聞く。日本でもようやく本格的に研究開発推進の道が開かれつつ
 
ある。4月19日に政府の「ゲノム医療実現推進に関するアドバイザリーボード」が、遺伝子治療の研究開発の推進についての議論を取
 
りまとめ、今後は日本医療研究開発機構(AMED)において遺伝子治療の研究開発について研究課題への支援を検討していくとい
 
う。ただでさえ遅れている研究開発を早く実用化に向けられるよう、環境整備と強力なバックアップ体制を取ることで、医薬の新た
 
な部門開発に乗り遅れずに患者貢献に尽くしてもらいたい。なお、厚生労働省の窓口は大臣官房厚生科学課に設置されるという。
 
(平成30年4月23日付 「日刊薬業」参照)
 
 
HCVについては、経口治療薬で、治療を受けた感染者の殆どはHCVが消失している。高い薬価やそれに乗じた偽薬事件が出るな
 
ど、その効果は大きい。しかし、HCV遺伝子タイプや腎臓障害などによってハーボニーやソバルディでの治療対象外となっている
 
人などに、マヴィレット配合錠やエレルサ錠とグラジナ錠の組み合わせの新規治療薬の対応が効果を上げている。今後は肝硬変等の
 
病歴のある人がウイルス消失後の発がんリスクなどへの対応や、肝硬変の肝繊維化解消の薬の開発も日本で進んでいる。長期間の罹
 
患で苦しんできた血友病HIV感染被害者からは、筆者も含めHCVウイルス消失の成功により身軽・元気になった気分の表出は、
 
大きな改善でもある。まだまだ、新たな挑戦で克服していかなけらばならない課題はある。時代はすさまじい勢いで進歩している。
 
驚きでもあるが大きな期待感があり、将来をかけて歩み続けたい。

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