被害者の今を語る ~ある被害者のメッセージから~ Vol.2
- 2010.9. 7
- ゆうり|薬害HIV感染被害者の今
「相談受付票は宝の山」。被害者の実情を語るとき、理事長がいつもこう言います。
相談受付票とは、はばたきに寄せられた相談内容を書き留めたもの。昨年度は電話相談だけで700件以上、他に手紙やメール、訪問、来訪なども含めるとトータルの相談件数は1,000件を大きく超えます。相談受付票には、どんな治療を受けているのか、何に困っているのかが事細かに書かれており、 はばたきの救済事業のもっともベースとなるものと言えます。
先日、「HIV・HCV重複感染血友病患者の長期療養に関する患者参加型研究」の班会議の中で被害患者の現状を報告するにあたり、平成18年から亡くなった7月までの過去数年分の相談受付票をもとに、治療内容や病状をまとめました。
そこから見えてきたのは、肝がんや静脈瘤に対する不安の声に医療者が俊敏な反応を見せなかったということです。
「まさかこんなに早いとは」、「こんな病状はめったにありません」。患者が亡くなった時、医療者から何度も聞いた言葉です。しかし、HIV/HCV重複感染の病状の進行は極めて速く、想定外の事が起こることは、以前からわかっていることでした。
従来の医学の常識だけでは計り知れないことが当たり前のように起こるのが、このHIV/HCV重複感染です。これまでの常識にとらわれ、それで良しとする医療では、患者はベッドの上でただ死を待つだけ。患者の声に耳を傾け、もっと俊敏に動いていれば、7月以降も新しい相談受付票が増えていったのではないでしょうか。